第8話 あの日の少年
ゲスト:嶺岸煌桜、金子岳憲
脚本:徳永富彦
監督:田村孝蔵
浅輪さんがエモエモな珍しい回でした。
徳永さん、『9』シリーズ内でも『相棒』みたいなピンポイント・アクセント回担当(なにそれ)になるんだろうか。今期、これだけだもんなぁ担当。
あらすじ
浅輪直樹(井ノ原快彦)ら特捜班に、緊急応援要請が入った。大型ニュータウンで暮らす小学生が学校帰りに何者かに誘拐され、父親の携帯電話に身代金を要求する脅迫メールが届いたという。現場はなんと直樹が子供時代を過ごした場所で、直樹はまさか自分が住んでいた街の事件を担当するなんて…と、驚きながらも極秘捜査を開始する。身代金受け渡しのタイムリミットが近づく中、特捜班は一丸となって犯人を追いかけるが…?
見どころ
◆国木田「浅輪さん犯人だったら、あっという間に捕まりますからね」
冒頭からお掃除大好き国木田班長にイヤミを言われる浅輪さん。(一応)真面目に掃除してるのに……しかもひとりで……
そんな平和?な日常から始まる今回。今回1話だけでも完結しているが、過去を知っているとより楽しめる回であったと思う。
◆志保「ねえねえねえ、見てみて!」
志保 「そこのカフェの、春の新作~! 美味しそうだから、みんなの分買ってきちゃった~!」
志保さん、気前いいな。優しいと言うか、気前がいい。
ラスクのバターサンドらしい。見た目はともかく(酷い)、美味しそうではある。確かに。かわいいかは知らん。
紙皿を投げるように配置してるのが志保さんらしい。そうだよな、志保さんだもんな……となるヒトコマ。しかも枚数も適当。本当、志保さんらしい。
◆由真「あっ、主任。もうコーヒー豆ないんですけど」
仮にも上司に「コーヒー豆ないんですけど」とか言える神経が羨ましい。由真ちゃんもだいぶこの特捜班に毒されてるな……
◆早瀬川「何度も催促して大変申し訳ないんですけど……」
早瀬川「前に貸し出した資料の返却、いつ頃になります?」
怒ってるなこれは。たぶん、志保さんあたりが犯人だと思う。しかも結構な期間、借りちゃってる系だと思う。ヤバい。
そして今回は誘拐事件なので殺傷沙汰なし、早瀬川先生の出番はここのみなのであった。解剖医キャラの損する点は、ご遺体がないと出番がないこと。
で、コーヒー豆を由真ちゃんに託そうとしたら、女性2人で恋愛ドラマ?の話で盛り上がってる。これで由真ちゃんをしばかない辺り、浅輪さんは優しいと思う。本当に。
◆青柳「気持ち悪い色。こんなの選ぶ人の気がしれないね」
青ちゃんのストレート! 志保さんは傷ついた!
でもまぁ確かに、水色はあんまりお菓子には向かない色かもしれない。というか、日本人の感性では合わない。アメリカンなお菓子を連想しちゃうよね。
由真 「こんなにかわいいのに。ひどーい!」
志保 「ねえ~。本当!」
青柳 「本当にそう思ってんの? 女同士でつるんじゃって」
そのつるみ感が新鮮でいいなぁ~と思ってる私です。男勝りで紅一点の小宮山志保さんも捨てがたいが、かわいい妹分ができて可愛がってる村瀬志保さんも好きですよ。
由真 「そういう青柳さんだって、いつも矢沢さんと……」
志保 「いやいやいやいや……あれはつるんでるんじゃなくて、矢沢さんに面倒見てもらってるわけ」
青柳 「面倒見てるのは俺の方でしょ!」
口ではなんとでも言える定期。
相手がいなくなったと仮定したらどちらが堪えるか、たぶん矢沢さんを失った青ちゃんに思わせて、意外と青柳さんを失った矢沢さんかもしれない。と思ったらそのまま青ちゃんだったりするのかな。どっちだろ。
◆浅輪「ああ、矢沢さん! ちょうどよかった。フォローお願いします」
矢沢 「よくわかんないけど、わかったよ」
適当でも、いきなり振られてこういうこと言える矢沢さんに痺れる憧れる。
しかし、
矢沢 「まっ、色々問題はあるでしょうけど、僕はわかってますよ。青柳さんの言いたいことは」
青柳 「そっか。そういういい加減なフォロー、いらないよ」
志保 「うわうわうわ……まさかの仲間割れ?」
由真 「『それ言っときゃ大丈夫っしょ』みたいな。いっちょがみしないでくださいよ」
矢沢 「チッ! もうやだよ……」
ちなみに「いっちょがみ」とは、
一丁噛み。何にでも口をはさむ人、何にでも首を突っ込んでくる人、またその行為。あいついっちょかみや。いっちょかみしてきよった。
いっちょかみの意味・解説
だそうです。元々は大阪弁なの!?
由真ちゃん関西人説。いやしらんけど。
◆国木田「ああもう……! なんで掃除中に散らかすんですか!」
今まで国木田班長は掃除に集中していて、皆さんのやり取りは聞いていなかった模様。聞いててこれなら意地が悪すぎる。
そして由真ちゃん。
由真 「だから! コーヒーさえ淹れれば、何もかも解決するんですって! 主任、コーヒーはどうしたんですか?」
ちょっと言ってる意味がよくわからないw なんだそのコーヒーのCMみたいなセリフは。
そんな個性豊かというか溢れるというかもはや個性が大渋滞の皆さんに、深呼吸する間も与えられず、事件捜査に関わっていくことになる浅輪さん。
事件捜査となればバラバラでもそれぞれ優秀だからなんとかやってくれる+係長エミュ状態だから浅輪さんがどっしり構えてられるが、日常だとこんなに振り回されてるんだな……となる。いやまぁ、ぶっちゃければ脚本の違いなんだろうけども。でも、こういうドタバタの日常での特捜班、浅輪さんってのも珍しくて面白い。今回の浅輪さん、やや『9係』の頃っぽさがあったよね。
◆浅輪「そこは、僕が育った街だった」
まさかのモノローグ!
浅輪さん、団地育ちだったのか。確かにっぽいといえばっぽい。
なんでも中の人、イノッチも団地育ちで色々エモ要素あったらしいが、そこらへんは私は存じ上げないので触れられない。しかし、そういう方面での楽しみ方もあったよってことなのね。
◆青柳「これ、警察辞めても俺らやっていけんな」
絵描きの矢沢さん、絵描きルックがめっちゃ似合ってて笑うw 変装なのに本業みたいな感じがする。いやまぁ、めちゃうまなのは存じ上げてますけど。
で、「俺ら」とは申しますが、青ちゃんは何やるの? マネージャー?
◆由真「ケンゴ!」
犬の名前にしては人名すぎる気がする……とっさに出てくる名前がそれって、君どれだけ村瀬夫妻の強火担なんだ。
それにしても、志保さんと由真ちゃんはどういう設定なんだろう。引っ越してきたばかりはいいとして、家族? 姉妹? なのか?
そしてこのシーンだけに出てきたワンちゃんは、一体どこから……謎ばかりのシーンであるw
◆浅輪「まさか、自分が住んでいた街の事件を担当するとは、思ってもみなかった
もう20年近く東京で捜査一課やってるのに、自分の住んでた街に全く関係しなかった……ってのもすごいな。どうなんだろう? 実際はそういうこと、あるんだろうか?
そしてそんなエモーショナルな独白をしていたからか、ひとりの少年の影に惑わされる浅輪さん。その正体は浅輪さんの思い出、なんだけど、そういう超常的一歩手前みたいな現象が起こるの、『9』シリーズでは珍しいってか初なんじゃなかろか。幽霊とか幻覚とかそういう類、『相棒』では要所要所で出てる気がするが、『9』シリーズでは覚えがない。
◆三ツ矢「村瀬さんも今、捜査会議に出ています」
村瀬さんは忙しいだけなんだ。映らないだけなんだ。ちゃんとこの世界に存在してるんだ……とわかるシーン。新藤くんもそうなんだよ。もっと言えば、係長も。
今回は三ツ矢くん、大活躍であった。防犯カメラぐらいしか捜査の手がかりがなかったからとはいえ、三ツ矢くんはこの後、差し入れでももらうべき。
◆青柳「もしもし? 俺俺! 俺だけど」
矢沢 「オレオレ詐欺かよ」
no、オレオレ詐欺。
今回は3組分かれての捜査で、全体的に浅輪さんのエモな雰囲気がいっぱいだったので、あおやざコンビのこういうホッとできるやり取りは貴重。
◆志保「じゃあ、この日の空港周辺の防犯カメラを、片っ端から当たれば……」
志保 「三ツ矢くんに連絡する!」
三ツ矢くんが過労死しちゃうよぉ。よくひとりで捌けてたな……
◆浅輪「何もかも覚えていたつもりが、随分忘れてしまっていた」
記憶なんて都合のいいものだから、覚えてるつもりが覚えてなくて、覚えてないつもりが覚えてたり、なんてこともあるんだろうな。
街並みは変わる。そして、自分自身も。でも、変わらないこともある。
◆青柳「もしもし? また助けてもらえる?」
矢沢 「お母さん助けて詐欺かよ」
ここらへん、アドリブなのかなぁ。矢沢さん、なんか笑いかけてた気がするんだけどw
◆矢沢「よし、来い!」
矢沢さんのたいあたり!
相手は倒れた!
青ちゃんとの連携プレーではあるけど、青ちゃんって本当に身体軽そうなんだよな……今回もふっとばされてたし。
◆浅輪「子どもたちがいそうな場所を捜していた」
浅輪 「それは同時に、自分が子どもの頃にいた場所を回ることでもあった」
ひとりだけエモエモ捜査している浅輪さん。これが今回、当たりだったからよかったものの、普通の営利誘拐とかだったら「お前、ひとりで何してんねん!」って話だよな。平和な話でよかった。
その中で見つける、過去の自分が記した<刑事になる>の文字。
浅輪
刑事ドラマの変化。刑事とて人間である、を描く『踊る大捜査線』以降の刑事ドラマの中でも、それに特化した人情派刑事ドラマの成功例が『9』シリーズだと思ってるよ。
◆青柳「こちら、勝鬨橋。異常なしです」
青ちゃんも、こういう時は真面目に応答するんだな……という発見。人の命がかかっている時は真面目な青ちゃんカッコいいよ。
◆浅輪「なんで忘れてたんだろう……」
過去の思い出に導かれるように走り出す浅輪さん。過去の姿と重なるような演出とか、ホント今回はエモがすぎる。
秘密基地、小学生なら1回は作ったことあるし、行ったことあるよね。たぶん。
浅輪さんが少年時代のものがそっくり残ってるとか、結構なエモですよね。無茶とも言う。でも、いいんです。そういう回だから。エモ特化だから。いいんです。
ちなみに浅輪さんのバカ兄貴については、旧『9係』っすな。私も復習したい。忘れかけている。
◆浅輪「なんだよ。昔の俺と一緒じゃん」
浅輪 「昔っていうか、今もか……実はさ、俺さ、ちょっと前に色々あってね。チームを任されることになったんだよ。で、このチームがさ、もう自由な人たちばっかりでさ。(中略)どうにか俺が繋ぎ留めなきゃって頑張っちゃってさ……でもよく考えたらさ、そんな必要ないんだよね。だから、ひとりになって思いつめなくてもさ。そう簡単に、バラバラになんかならないんだよ。人って。だから俺もさ、もっと信じてみようかなって。もっと預けて、甘えてみようかなって。どう思う?」
「あの日の少年」は、今の少年も今の中年も救った。
「そう簡単にバラバラにならないんだよ、人って」は、理想論かもしれない。でも、そう信じたいって思う自分もいるよ。
エモエモな話のオチは、やっぱり綺麗事であってほしいじゃないですか。理想であってほしいし、希望であってほしい。そう思うよ。
雑感
浅輪「ひとりじゃ、なかったのかもな……」
篠原家も、特捜班も、みんなバラバラなんかじゃない。実は大きな輪で包まれた「家族」なんだよって、そういう話だったんですね。今期一平和な話であった。
今期第6話が係長エミュの局地なら、今回は係長との差別化がされた40代の浅輪さん、という感じ。係長だと様々な理由から、なかなかこのエモさは出せなかったのかもなぁ、と思ったり。事件の真相は単純ですぐわかるようなものだけど、本題は浅輪さんのエモなので。
あとこれシーズン6開始前もTwitterで言ったんだけど、今期は特捜班を家族に見立てる見方の推しがすごい。割と今回が最終回でも良かったんじゃない?レベル。この時点ではレギュラー陣のドラマが解決してないことを除けば、今期の総まとめと言ってもよかったんでは。
言ってしまえば光の徳永脚本だったね。闇の方面はほら、何回か『9』シリーズでもあるのでそちらを参照していただくとして。
徳永脚本での浅輪さんは「係長エミュ状態をどうにかしよう」みたいな試行錯誤を感じる。全面的に上手くいってるかはともかく、そこは支持したい。係長エミュ状態も面白いけど、そうじゃない浅輪さんも見たいもんね。