赤い指
ゲスト:杉本哲太、西田尚美、富田靖子、松重豊、佐々木すみ江、田中麗奈、泉澤祐希、山崎努
原作は大分前に読んだっきり。でも、基本的には原作に忠実だったと思うんでよかったです。後味の悪さは、ちょっと抑えられてたかな?
読んだ時はオチに「えー」とか思ったような記憶もあったんだけども、こうやってドラマとして見せられると、実に迫力がある。そして、えげつない。
序盤の女の子の死体遺棄場面とか、夫婦の言い争いの場面とか、終盤の鬼のような加賀さん&婆ちゃんの人情揺すぶり作戦とか、ものすっごい胃にきたもん。「なんで私、こんな欝ストーリーを新年早々から見てるんだろう……」って気分になりましたもん。何この欝正月。
前原さん家が割とリアルにどうしようもない家族すぎた。ここまで道を踏み外すことは稀かもしれませんが、ああいう風にすれ違い、噛み合わなくなり、関係性が壊れるのは十分ありえる、起こりえる話ですよね。
話の細かい粗はさておいて、尺的にはしょうがないけどやっぱり2時間半はダレちゃうよなぁっていうのと、バカのひとつ覚えみたいにクライマックスにデカい音でBGMを鳴らすのやめろってのが残念でした。これは『新参者』のときから酷かった演出の悪い癖。メイサの役は、途中の加賀さんの台詞のためだけにいると思えば許容範囲。
でも、役者の皆様の熱演やキレのある演出で、それらの粗や何かもカバーされていて、概ね満足できた2時間半でした。印象に残っているのは、女の子の死体を遺棄しに行くシーンと、アニメグッズを捨てに行くシーン、前原さん家の旦那さんが必死こいて自転車を漕いでいるシーン。
ほかに気になったこととか。
◆加賀さんが出てくるだけで、「この家族、詰んだな」って思ってしまうこの存在感。前原さん家の旦那さんに渡した名刺が、私には地獄への切符にしか見えなかったよ。
今回の加賀さんは、むやみやたらにニヤニヤしてなくて、原作の加賀さんにちょっと近かったな。よかった。
しかし終盤の追い詰め方は鬼か。やってることは、むしろあの息子夫婦の方が鬼畜なんだけど。
◆加賀さんのお父さんのエピソードで危うく涙腺が
メールを介して将棋のやり取りって、それができるってことは、あの看護士さんもなかなかの腕前なんだろうなぁ。
◆全然関係ないけど、前原さん家の奥さんが、何故か麻木久仁子に見えてしょうがなかった。髪型? 髪型のせいなの?
そんな奥さんが序盤、「息子を警察に突き出したら、私、死ぬから!」(要約)って叫んでるのを見て、「おお、死ねばいいのにな」って呟いたら家族に冷たい目で見られた。
いやでも実際、あそこで奥さんを黙らせて息子を自首させた方が、みんなの心の傷は浅くて済んだと思うんだよ。不毛なたられば話だし、そもそも話が始まらなくなるけど。
公式サイトで役者さんが言っている通り、この人は自分と息子しか愛してなかったんだろうなぁ。
◆アニヲタの汚名を着させられてまで息子を庇う、前原さん家の旦那さんの(ものすごく間違った方向性の)頑張りに涙しなかった人とかいるんでしょうか。否、いない。やっぱり哲太さんは上手い。別にアニヲタのフリをさせられたからじゃなくてね。
◆しかしまぁ、息子の直巳くんはやはりクズだな。幼女をアニメグッズで釣って悪戯しようとするなんて、ヲタクの風上にも置けねぇ。
最後、連行する時に抵抗しなかったのは意外。原作では全く反省していなかったし、最後は思い切り抵抗していて、加賀さんに叱り飛ばされていたような気がした。でも、あそこでさらに抵抗されたら、それはそれでクドいかな。
ドラマ版は、なんだかんだでひたすら自らが犯した罪に怯えている感じで、これはこれで救いがないように見えるけど。
◆『スーパープリンセス』略して『スパプリ』。小さい子には言い辛い略称だなぁ。
そして、無駄にフィギュアやポスターにこだわる。
たまにドラマの小道具班って、とんでもない暴走を見せたりするよね。何とは言わないけど。
◆富田靖子さんは眼鏡かけると綺麗だなと素直に思えるので、今度『853』をやるときは眼鏡をかけて出てきてくれたら誰が喜ぶかって私が喜びます。
◆そういえば、温水さんって冒頭のあのシーンのためだけに出たの? 他にもいろいろな人が出てて、ものすごい無駄遣い。『新参者』の時からキャストの豪華さはすごかったけども。
加賀シリーズは『悪意』がオススメですよとこっそり宣伝しておく。
『卒業』は学生時代の加賀さんのお話、『眠りの森』は、加賀さんのキャラクターを知る上では重要なお話です。
短編集の『嘘をもうひとつだけ』も粒ぞろいで読みやすいし、推理力に自信のある人は、『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』もオススメ。犯人がわからない(解決編がない)まま終わる、1本の長編がそのまま「作者から読者への挑戦状」。ちゃんと考えれば答えは出るらしいんですが、私は未だに理詰めで犯人を指摘できないバカです。ごめん。