『ナンシー関のいた17年』を見たよ。当日見忘れてしまって、このドラマを見るためだけにNHKオンデマンド登録しちゃったわよ! それぐらい、このドラマを見たかったのである。それなら忘れるな、っつー話ですが。
話はドキュメンタリー形式で生前関わった人々のインタビューとドラマ部分をごたまぜにした感じ。このドラマの総括としては既にドラマ内の〆として言われてしまっていて、「『ナンシー関の生涯を描く』と言っておきながら、お涙頂戴にしてどうする。保険をかけるな、NHKの限界を見た」なのだが、それにノセられて涙を流している時点で私にはそれを言う資格はない。
ついでに言うと、デーブ・スペクターの好感度が無駄に下がった(いや別に元々好きでもなんでもないんだけど)。言ってることがひとりだけズレてて、いやまあこういう観点の人も必要なのかもしれないがお前はつまらん。相手のコラムに対してつまらん反論を書いた時点で、デーブ・スペクターの負け。そういう感じ。
あと、終盤の「テレビがつまらなくなったから『ナンシー関』の寿命も尽きた」は、たとえ本人が思ってても言わない(いや、妹さんの夢の話で本人は言ってないんだけど)んだろうなぁとか、色々思うところはあった。
でも全体的に、ウェットにもドライにもなりすぎず、程よい出来のドキュメントドラマだったんじゃないでしょうか。
ナンシー関没後関連だと、ファンが書いた「ナンシー関」がナンシー関の急死を語る形式の以下の文章が好きだ。
そんなわけで、急死である。いきなり誰のことかと思えば、なんと私だ。
いやー、参ったね。まさか自分が死ぬことになろうとは。
それにしても、これほど意外でありながら必然性を兼ね備える急死が他にあろうか。
私の急死にはツッコミどころが多過ぎる。その9割5分はデブ関係だが。
思えば年末進行の最中に思い切りリンパを腫らした。あれは私のニブい体が、最後に発したSOSだったのかもしれない。
見た目に目立つようなこともなかったし、ついつい軽視してしまったのがいけない。
元々輪郭なんてあってないような顔立ちだったもんな。いや、私のことだが。やり残したことなんて、そもそも余力が全力だった私にとってあると言えばいくらでもあるが、ないと言ってしまえば1個もないのだ。
週に何度も、私はオチを考えて生きて来た。これはもちろん書き物の中での話だが、森繁より先に逝ってしまうことをもって、私の人生のオチとしたい。
先に逝くことが勝ちなのか負けなのかはおいといて。
ドラマ内の台詞の中(ナンシー関が実際に語った言葉の中)なら、以下のが好き。
「私は『顔面至上主義』を謳(うた)う。見えるものしか見ない。しかし目を皿のようにして見る。そして見破る。」
――これ程カッコいい挟持もないな。一端の感想ブロガーとして心に留めておきたい言葉です。
視聴率だとか業界の裏事情だとかを判断要素に加えるのではなく、自分の目だけを信じる。そんな信念を持った言葉なんですね。
そんな風に言う私だが、ナンシー関の信者かと言われると「好き」だが本をすべて集めきってるほどじゃない。
でもナンシー関の連載を見るために、当時親が買ってきた週刊文春(週刊朝日の方は存在を知らなかった)を読んでたり、時にはコンビニで立ち読みしてたりしてた嫌な子どもでした(ついでに中村うさぎのエッセイも読んでたなあ)。
ナンシー関のコラムには子どもでもわかる面白さがあったと思う。本当にその面白さに気づけたのはきっと最近になってからなのだろうけれど、そして扱っている媒体が「テレビ」という時代を切り取ったものだから多少は色褪せるのかもしれないけれど、読んでみれば必ず彼女の批評眼の鋭さに気づく。
ドラマ内、ちょっとでいいから『記憶スケッチアカデミー』にも触れてあげて欲しかったな、テレビ批評以外だとアレが一番好き。素人の記憶スケッチにすら発揮されるナンシー関のツッコミが面白い。
今回のドラマを見て考えたのは、「批評」とはその対象が「好き」だからできることなんだってこと。
考えてみりゃ当たり前なんだけど。「嫌い」なものに対して、人は公平公正な目を保ち続けることは出来ないのだ。
そう、ドラマ内で実際にデーブ・スペクターが言ったように。あれはおそらく、皮肉なんかではない。彼の本心ではないか――と私は思う。彼は本当に、ナンシー関が悪意だとか憎しみだとかで批評を書いていると思い込んでいたんじゃなかろうか。
公平公正な目を保つなんてことは「好き」でも一緒で出来ないんじゃないの? と思うかもしれないけれど、「好き」だからこそ、「嫌」も「ダメ」も一緒くたに愛せるんじゃないかと。だからこそ、ナンシー関は言うのだ。
「自分で言うのもなんだか、芸なのだ」と。そうじゃなきゃお金はもらえない、と。自分の芸を憎む人なんて、どこにもいやしない。
それぐらい、ナンシー関はテレビを愛していた。陳腐な表現ではあるが、そう思う。
改めて合掌。ああ、渋谷PARCOのナンシー関には展行きたかった。結局日程合わずで行けなかった。あーあ。
「ナンシー関のいた17年」は、29日までNHKオンデマンドで配信していますんで、よかったら是非。